売上と所得と課税所得のちがい|個人事業主の「控除」を円の計算例でやさしく整理

売上と所得と課税所得のちがい 税金・確定申告

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この記事のポイント

  • 売上 → 所得 → 課税所得の順に、金額はどんどん小さくなる。税金がかかるのは最後の「課税所得」
  • 青色申告特別控除は「所得」を計算する側の控除。基礎控除や社会保険料控除などは「課税所得」を計算する側の控除
  • 基礎控除は、2025年分から所得によって金額が変わるしくみになった。2026年分はさらに変わっている
  • 控除をきちんと使うと、同じ売上でも所得税が数万円変わることがある

税金の話をしていると、「売上」「所得」「課税所得」という言葉が、ほとんど同じような顔で出てきます。でも、この3つはまったく別の金額です。ここがあいまいなままだと、「売上が500万円だから税金は○○円」と、実際よりずっと高く見積もってしまうことがあります。

私(マコト)は数字が苦手で、独立したばかりのころは、税金がどういうしくみで決まるのかがまったくわかりませんでした。だからこそ、この記事では計算の順番と円の例を、できるだけていねいに並べます。

前の記事(個人事業主の税金、まずはこれだけ)で、個人事業主が払う税金の全体を見ました。今回はその土台になる「金額の決まり方」の話です。

3つの言葉を、先に1つずつ説明します

ことばメモ:売上・所得・課税所得

  • 売上(うりあげ):仕事をして、お客さんからもらえるお金の合計です。税金の書類では「収入金額」とも呼ばれます。
  • 所得(しょとく):売上から、仕事のためにかかったお金(経費)を引いた「もうけ」です。青色申告の人は、ここからさらに青色申告特別控除を引きます。
  • 課税所得(かぜいしょとく):所得から、いろいろな「控除」を引いた残りです。本当に税金がかかるのは、この金額だけです。

ことばメモ:「控除(こうじょ)」とは?

「この分には税金をかけません」と、金額から引いてもらえるもののことです。だれでも使えるもの、国民健康保険などを払った人が使えるもの、家族を養っている人が使えるもの、など種類がたくさんあります。

流れを1行で書くと、次のようになります。

  1. 売上 − 経費 = もうけ仕事でかかったお金を引きます。
  2. もうけ − 青色申告特別控除 = 所得青色申告をしている人だけが引けます。白色申告の人は、1のもうけがそのまま所得です。
  3. 所得 − 所得控除 = 課税所得基礎控除や社会保険料控除などを引きます。
  4. 課税所得 × 税率 = 所得税ここで、やっと税率が出てきます。

大事なのは、税率をかけるのは4番目だけということです。売上に税率をかけるわけではありません。

円の例で、売上500万円の人を追いかけてみる

ここからは、次のような人を例にして、実際に計算してみます。数字はわかりやすくするための例です。

項目金額(1年間)
売上500万円
経費150万円
青色申告特別控除65万円(条件を満たした場合)
払った国民健康保険と国民年金合わせて60万円(例)
小規模企業共済の掛金12万円(月1万円の例)
生命保険料控除4万円(例)
  1. 売上 − 経費500万円 − 150万円 = 350万円(もうけ)
  2. 青色申告特別控除を引く350万円 − 65万円 = 285万円(これが所得)
  3. 所得控除を引く基礎控除104万円(2026年分・後で説明)+ 社会保険料60万円 + 小規模企業共済12万円 + 生命保険料4万円 = 180万円。285万円 − 180万円 = 105万円(課税所得)
  4. 税率をかける105万円は195万円以下なので税率5%。105万円 × 5% = 52,500円。復興特別所得税(2.1%)1,102円を足して、100円未満を切り捨てると約5万3,600円

売上は500万円でも、税金がかかる金額は105万円まで小さくなりました。「売上500万円の5%で25万円」などと考えていたら、まったくちがう数字になってしまいます。

控除は「2つのグループ」に分かれている

ここで、少しややこしいところを整理しておきます。「控除」という名前がついていても、引く場所がちがうものがあります。

グループどこで引く?代表的なもの
所得を計算する側もうけ → 所得 の段階青色申告特別控除(65万円・55万円・10万円)
所得控除(課税所得を計算する側)所得 → 課税所得 の段階基礎控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、医療費控除、扶養控除、配偶者控除 など

青色申告特別控除は、名前に「控除」とついていますが、所得そのものを小さくする控除です。所得が小さくなると、住民税や国民健康保険の計算のもとになる金額も小さくなることが多いので、じつはとても影響の大きい控除です。

ことばメモ:「青色申告特別控除」とは?

帳簿をきちんとつけて、決められた書類をつけて期限までに確定申告をした青色申告の人が、もうけから引ける特別な金額です。国税庁の案内では、複式簿記で帳簿をつけて期限内に申告すると最高55万円、さらにe-Taxで申告するなどの条件を満たすと最高65万円、それ以外の青色申告の人は最高10万円です。

※ 国税庁の資料では、2027年分(令和9年分)からは青色申告特別控除の区分が見直される予定と案内されています。くわしくは国税庁のページで確認してください。

基礎控除:だれでも使えるけれど、金額は所得で変わる

基礎控除は、申告する人ならだれでも使える控除です。以前は多くの人が一律48万円でしたが、2025年分から見直され、所得の金額によって控除の額が変わるしくみになりました。さらに2026年分(令和8年分)についても改正があり、国税庁のページでは次のように案内されています(2026年10月時点)。

本人の合計所得金額2025年分(令和7年分)2026年分(令和8年分)
132万円以下95万円104万円
132万円をこえ336万円以下88万円
336万円をこえ489万円以下68万円
489万円をこえ655万円以下63万円67万円
655万円をこえ2,350万円以下58万円62万円
2,350万円をこえる所得が上がるほど少なくなり、2,500万円をこえると0円

※ 国税庁「No.1199 基礎控除」より。2026年分の改正は2026年12月1日に施行されるもので、2028年分以後はまた金額が変わると案内されています。年によって変わるので、申告する年の金額を必ず国税庁のページで確かめてください。

上の例の人は、所得が285万円なので、2026年分の基礎控除は104万円です。もし2025年分のルールで計算すると88万円になり、課税所得は16万円ふえます。税率5%なら、所得税は約8,000円ちがう計算です。

住民税の控除は、所得税と同じではありません

ここで説明している金額は所得税の基礎控除です。住民税にも基礎控除がありますが、金額は所得税とちがいます。「所得税ではこれだけ引けたから、住民税も同じ」とは考えないようにしましょう。

個人事業主がよく使う所得控除

所得控除は、国税庁の一覧では15種類以上あります。全部を覚える必要はありません。独立した人がまず知っておきたいのは、次のあたりです。

控除の名前どんな人が使える?引ける金額
基礎控除ほぼすべての人所得によって変わる(上の表)
社会保険料控除国民健康保険・国民年金などを払った人その年に払った金額の全額
小規模企業共済等掛金控除小規模企業共済やiDeCoの掛金を払った人その年に払った掛金の全額
生命保険料控除生命保険・医療保険・個人年金保険などに入っている人計算式で決まる。合計で最高12万円
医療費控除1年の医療費が多かった人医療費 −(保険などで戻った分)− 10万円 ※
扶養控除16歳以上の家族を養っている人ふつうは1人38万円(年齢などで変わる)

※ 医療費控除の「10万円」は、総所得金額等が200万円未満の人は「総所得金額等の5%」になります。

ことばメモ:「小規模企業共済」と「iDeCo(イデコ)」

  • 小規模企業共済:個人事業主などが、仕事をやめたときなどに受け取るお金を、自分で積み立てる国の制度です。「個人事業主の退職金づくり」とよく言われます。
  • iDeCo(個人型確定拠出年金):自分で掛金を出して運用し、老後に受け取る年金の制度です。

どちらも、払った掛金の全額が所得から引けるのが特ちょうです。ただし、途中で自由に引き出せないなどの決まりがあるので、入る前に公式の案内をよく読んでください。

社会保険料控除は「払った分」だけ

国民健康保険や国民年金は、その年に実際に払った金額が控除の対象です。たとえば、年末に払い忘れていた分を翌年1月に払ったら、その分は翌年の控除になります。年末の前に、払い残しがないか確かめておくと安心です。

国民年金の保険料は、確定申告のときに証明書(控除証明書)が必要になります。日本年金機構から届くので、捨てずに取っておきましょう。

医療費控除を円で見てみる

たとえば、所得285万円の人が、1年間に病院と薬で15万円払い、保険から戻ったお金がなかったとします。

  1. 払った医療費 − 戻ったお金15万円 − 0円 = 15万円
  2. 10万円を引く15万円 − 10万円 = 5万円(これが医療費控除)
  3. 税金がどれだけ減る?税率5%の人なら、5万円 × 5% = 約2,500円(+復興特別所得税)所得税が少なくなります。

「控除が5万円」と聞くと5万円戻ってくるように感じますが、実際に減るのは控除の額 × 税率の分です。ここも、よく勘ちがいされるところです。

控除があるかないかで、どれだけ変わる?

最初の例の人(売上500万円・経費150万円)で、控除の使い方によって所得税がどう変わるかを並べてみます。基礎控除は2026年分の金額で計算しています。

パターン課税所得納める所得税の目安
A:青色65万円 + 基礎・社会保険料・共済・生命保険105万円約5万3,600円
B:Aから小規模企業共済と生命保険料をなくす121万円約6万1,700円
C:Bから青色申告特別控除もなくす(白色申告)186万円約9万4,900円
D:Cから社会保険料控除も入れ忘れた(基礎控除だけ)246万円約15万1,600円

※ 所得税(段階ごとの税率)に復興特別所得税2.1%を足し、100円未満を切り捨てた目安です。課税所得が195万円をこえる部分は税率10%で計算しています。

AとDでは、約10万円もちがいます。とくに社会保険料控除の入れ忘れは大きな差になります。国民健康保険と国民年金は金額が大きいので、払った分は必ず入れましょう。

自分の数字で計算してみる

売上や経費を入れると、課税所得と所得税の目安が出る計算ツールです。基礎控除は2026年分(令和8年分)の国税庁の表で計算します。

その年に実際に払った金額

小規模企業共済・iDeCo・生命保険料控除・医療費控除・扶養控除など

売上 − 経費—
青色申告特別控除を引いた所得—
基礎控除(2026年分)—
所得控除の合計—
課税所得(税金がかかる金額)—
納める所得税の目安(復興税こみ)—

※ 事業所得だけの人を想定した、ざっくりの目安です。基礎控除は国税庁「No.1199 基礎控除」の2026年分(令和8年分)の表、税率は「No.2260 所得税の税率」の表で計算しています。青色申告特別控除は、所得より大きくは引けません。源泉徴収された分・予定納税・税額控除(住宅ローン控除など)は入れていません。

よくある勘ちがい

勘ちがい本当は
売上に税率をかける税率をかけるのは課税所得。経費と控除を引いたあとの金額
控除の額がそのまま戻ってくる減るのは控除の額 × 税率の分。税率5%なら、控除10万円で約5,000円
青色申告特別控除も、基礎控除と同じところで引く青色申告特別控除は所得を出す段階で引く。基礎控除などはそのあと
国保や国民年金は経費になる経費ではなく、社会保険料控除として引く
基礎控除はずっと48万円2025年分から所得によって変わる。年ごとに国税庁で確認する

4つ目の「国保や国民年金は経費ではない」は、まちがえやすいところです。経費と控除は、どちらも「引くもの」ですが、引く場所がちがいます。何が経費になるのかは、次の記事でくわしく説明します。

まとめ:税金は「引いて、引いて、最後にかける」

  • 売上から経費を引くと「もうけ」、青色申告の人はさらに特別控除を引いて所得
  • 所得から基礎控除・社会保険料控除などを引くと課税所得
  • 税率をかけるのは、最後の課税所得だけ
  • 基礎控除は年によって金額が変わるので、申告する年の国税庁の表で確かめる
  • 国民健康保険・国民年金の払った分を入れ忘れると、税金が大きく変わる

私も最初は、「所得」と「課税所得」のちがいすらわかりませんでした。でも、「引いて、引いて、最後にかける」という順番さえつかめば、確定申告の書類に出てくる数字の意味が、ぐっと読みやすくなります。

控除が使えるかどうか、自分の場合はいくらになるかは、人によって変わります。迷ったときは、税務署の相談窓口や税理士に確認してください。

自分の数字で、税金と手取りを計算してみる

売上と経費を入れるだけで、所得税・住民税・個人事業税・国民健康保険・国民年金と、手取り・毎月取り分けておきたい金額の目安がわかります。家族の扶養や、住んでいる地域の国保にも対応しています。

個人事業主の手取り・税金シミュレーターを使う

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※ 本記事は、2026年10月時点で国税庁などの公開情報で確認できた内容をもとにした一般的な説明です。控除の金額や条件は年によって変わることがあり、計算例は説明のための目安です。実際の税額は、国税庁のページや、税務署・税理士などの専門家にご確認ください。

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